なぜ中学受験をするのか? ① ~私立中学校は選べる~

「中学受験の基礎知識」シリーズでは、「私立と公立の違いは?」「偏差値って何?」など、小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。Vol.1では、「なぜ中学受験をするのか? ~私立中学校は選べる~」をテーマに、中学受験について解説します。

公立中学校と私立中学校、それぞれのスタート

戦前、日本の中等教育は原則男女別学で、異なる修業年限、学校種が併存している複線型でした。小・中・高・大の単線型に転換されたのは、1947年。学校教育法と教育基本法が制定されて、基本となる学校体系が6・3・3・4制となりました。

中学校が義務教育となり、新制中学校が全国で数多く開校されましたが、その大半を占めた公立中学校は男女共学。一方、多くの私学は、旧制中学校が新制高校へと転換したことに伴って、中学校を併設するという中高一貫教育の形をとりました。

私学については、共学か男女別学にするかは原則自由とされたので、男子校や女子校も残ったのです。私学はその後も社会の変化に対応しながら、独自カリキュラムなどで公立にはない魅力を打ち出してきました。

中学受験への関心の高まりと時代背景

東京都教育委員会が発表した「令和2年度公立学校統計調査報告書」によると、都内の小学校を卒業して都内の私立中学校へ進学した生徒の割合は18.4%(令和元年度卒業)。この10年間で2ポイント上昇しています。

23区の上位は、文京区43.6%、港区40.2%、中央区37.2%となっており、国立や都外の私立への進学なども含めると、上位3区では約半数が中学受験をしています。

東京都教育委員会「公立学校統計調査報告書」より

受験にかかる費用や時間、入学後の費用、通学時間などの負担も少なくない中、なぜ中学受験をするのでしょうか? 中学受験への関心の高まりと、その時代背景を見てみましょう。

1950年頃から、特定の学校に志望者が集中しないように、全国の公立高校で学区制度が導入されました。公立中学校は、「高校受験」と切り離して考えることができません。目指していた公立高校が学区外になってしまったことから、国立の中学や私立の中高一貫校を志望する生徒が増えました。

1980年代には、公立の学校で校内暴力が増加したため、荒れた学校へ行きたくないという思いから私立志向が加速。公立中学校は学費などの負担は少ないですが、居住地によって入学する学校が決められており、自分で選ぶことができません。一方で、私立中学校は、大学の付属校、ミッション系の学校、男子校・女子校など、価値観や個性に合った学校を選ぶことができます。公立中学校との大きな違いは、「選べる」ということなのです。

公立にはない私学の魅力として、「創設者がいる(建学の精神)」「男女別学もある」「独自カリキュラム」「教員は原則、異動がない」「施設や体験プログラムが充実」などが挙げられます。

時代が変わっても受け継がれる創設者の思い

公立と違い、私学には創設者がいます。創設者は高い志を持って、教育への思いを実現するために私財を投じて学校を創りました。その思いを集約しているのが、「建学の精神」です。

創設者がどのような人物か、どのような思いで学校を創ったかを知ることで、その学校が「どのような人材の育成を目指しているか」がわかります。創設者は教育者に限らず、実業家や宣教師など経歴も様々で、「建学の精神」も多様です。

そして「建学の精神」は、時代が変わっても継承されています。ですから、子どもの性格や思考、興味や関心に合う学校を選ぶためには、「建学の精神」を知ることが重要です。

「建学の精神」(教育理念、校訓)は、学校案内や学校のホームページに書かれていますので、ぜひ最初に確認しましょう。

『中学受験スタディ』ご参画校の「学校詳細ページ」には、「建学の精神、教育理念」という項目があります。学校検索ページから興味のある学校を検索し、「学校詳細ページ」をクリックしてご覧ください。

男子校、女子校という選択

男女別学の学校を選べるのも私学の魅力ですが、近年は共学化する学校も増えてきました。それらの多くは、教育のベースとなっている「建学の精神」は継承しつつ、時代や社会の変化に柔軟に対応して新たなスタートを切っています。

共学化には多様性という面での期待が高く、共学化後に取材をすると「男子と女子では視点が違う部分もあり、多様な意見が出やすくなった」「それぞれの良さを認め合い、相互補完的な関係が築けている」などの声が聞かれます。

その一方で、男子と女子、それぞれに適した教育の経験や実績を活かし、別学のスタイルを堅持している学校もあります。そういった学校の取材からは、「共学校なら担当しないような役割を担当するなど、性別を超えた役割分担が自然にできてくる」「異性がいない方が気兼ねなく過ごせる」「自分に合う友達を見つけやすい」「不安もあったが、入ってみたら開放的で自由に過ごせている」などのメリットが見出せます。

子どもの成長・発達には男女差があり、それぞれに適した学びのノウハウを持っていることも別学校の魅力です。共学校と別学校の両方を知った上で、どちらが合っているか見極めましょう。

次回は、「独自カリキュラム」について解説します。

次回

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