なぜ中学受験をするのか? ② ~独自の中高一貫カリキュラム~

「中学受験の基礎知識」シリーズでは、「私立と公立の違いは?」「偏差値って何?」など、小学生のお子さんを持つ保護者の皆さんが気になる項目について解説していきます。Vol.2では、「なぜ中学受験をするのか? ~独自の中高一貫カリキュラム~」をテーマに、中学受験について解説します。

中高一貫教育のメリット

中高一貫校ではない公立の中学校に入学した場合、中学の3年間と高校の3年間で教育の分断が避けられません。そのため多くの場合、中・高のカリキュラムに重複する部分がでてきてしまいます。また、中学3年間で学ぶ内容は高校受験と切り離すことができないため、公立の場合は高校受験を意識した勉強になりがちです。

一方、中高一貫の私立中学校の場合は、学校ごとに特色のあるカリキュラムを編成できます。中・高での無駄な重複を整理することができ、連続性のあるカリキュラムを組むことが可能なのです。その結果、中・高別々なら6年かけて学ぶ内容を5年間で学び、残りの1年を大学入試の問題演習にあてている学校も多くあります。

高校受験がないことのデメリットとしては、「中だるみ」の時期ができてしまうことが挙げられます。しかし、公立なら高校受験に向けた指導にあてる時間にキャリア教育などを行うことで、将来への目標を明確にすることができます。「中だるみ」というデメリットをメリットへと転化させ、大学受験で結果を出している学校も多いです。

私学は結果を出さなければ、生き残れません。受験校を選ぶ際にも、大学合格実績に目が行きがちですが、その結果を出すまでの過程は学校によって異なります。合格実績だけでなく、どのような取り組みによってその結果につながっているかを知ることが大切です。近年は、大学受験に必要な知識だけでなく、社会に出てから必要になる知識や技術を身につけられるように、カリキュラムを編成している学校も増えてきています。

様々なタイプのアクティブ・ラーニング

私立の中高一貫校では、アクティブ・ラーニング型の授業が積極的に行われています。アクティブ・ラーニングは、教員による一方向的な講義形式の教育ではなく、問題解決学習や体験学習など、生徒たちの能動的な参加を取り入れた教授・学習法の総称です。グループディスカッションやディベート、グループワークなども有効な方法とされており、学校ごとに様々な形で取り入れています。

どの教科で取り入れているかは、学校によって異なります。理科や社会、技術・家庭科など、教科の枠を超えて1つの課題に取り組む教科横断型の授業を取り入れている学校もあります。生徒が主体的に学んでいくので、「何を学んだか」を生徒自身で確認する時間を作ることが大切です。

学んだことを確認するための「振り返りシート」なども、アクティブ・ラーニング型授業の重要なツールとなっています。

一口に「アクティブ・ラーニング」といっても学校ごとの特色があり、多様な選択肢から子どもに合った授業形式や学習方法を選べることも私学の魅力です。

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私学では文科省の検定外教科書も使用

授業で使う教科書にも、公立と私立では違いがあります。公立中学校の場合、学校の設置者である都道府県や市町村の教育委員会が、その地域、学校にふさわしい教科書を採択します。

一方、私立の場合は、学校ごとに自由に選ぶことができるので、学校の教育方針や生徒に合った教材を選定。教科によっては、教科書を使わずに、担当教員が作成したオリジナルのプリントなどで授業を行っている学校もあります。

私学の中には、文部科学省の検定済教科書と検定外教科書を併用している学校もあります。習熟度別にクラス編成をしている場合は、クラスごとに違う教科書を選ぶことも可能です。特に英語の場合は、英語圏で使われている教科書を使うこともあり、教科書を自由に選べることは、生徒のレベルに合わせた細やかな指導にもつながっています。

大学卒業後を見据えたキャリア教育

なりたい職業は、自分が知っている職業の中からしか選ぶことができません。多くの私学では、中学生のうちからキャリア教育を行い、様々な職業について知るきっかけを作っています。

例えば、社会人になった卒業生から話を聞く機会を作ったり、企業に協力してもらい職業体験を実施したり。生徒の興味や関心に合わせて体験する職業を選べるように、100近い企業に協力を依頼している学校もあります。多くの企業や人材とつながりを持っているのも、私学の魅力です。

「中学受験スタディ」のインタビューで将来の夢について聞くと、「ドラマで興味を持ち、医療関係の仕事に就きたい」と答える生徒が少なくありません。しかし多くの場合、まだ漠然とした夢です。

そこから一歩進み、中学生のうちにクリニックで職業体験をした生徒は、「体験前はなんとなく看護師になりたいという程度でしたが、より具体的にイメージできるようになり、訪問看護の現場で働きたいと思うようになりました」というように、目標がより具体的になっていました。

ほかにも、中学生のときに学校が招いた宇宙物理学者から宇宙についての話を聞いた生徒は、以前から抱いていた宇宙への関心がさらに高まり、海外の大学で天文学を学ぶ道を選んだという例もあります。

中高一貫校では、大学受験をゴールと考えるのではなく、その先まで見据えた教育を早い時期から行うことができます。キャリア教育に力を入れている学校は、成績から判断して「行ける大学」を選ぶのではなく、「将来の夢」や「やりたいこと」が実現できる学部や大学への進学を目指しているのです。

中学生のうちからキャリア教育を行い、「どうなりたいか」が明確になれば、大学受験へのモチベーションも高まります。その結果が、大学合格実績として表れているケースもあるのです。

「高大連携」で目標を明確化

大学の付属校や大学と提携している学校では、早い時期から大学のキャンパスを訪問したり、学部説明会や模擬講義などを実施したりして、学部や学科を知る足がかりを作っています。大学で学ぶことを具体的にイメージできる機会が得られれば、入学後のミスマッチを減らすこともできるのです。

中には、大学の教員による大学レベルの講義を履修して、大学の単位を先取りできる講座を行っている学校もあります。近年は、大学付属校でなくても、「高大連携」に積極的な私立の中高一貫校が増えています。

中・高の連続したカリキュラムでは、将来に向けた学びや体験をする時間も確保できます。6年間の中でどのような学びや体験を組み込むかは学校ごとに工夫しているので、その特色を知ることが大切です。『中学受験スタディ』の「スペシャルレポート」や「スクール特集」では、ご参画校の特色ある教育を紹介しています。ぜひご覧ください。

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